デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第2回でのプレゼンでお話しした内容
デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第2回でプレゼンの機会をいただきました。その議事録が公開されましたので、私のプレゼンの部分を掲載します。全体の議事については、議事録をご覧ください。
松尾でございます。時間もないということで、15分ぐらいですれけども、分散型金融の時代に求められるコミュニケーションの仕方ということで、15分ぐらい御説明差し上げたいと思っております。
2ページ目、自己紹介のページは、長いので後で読んで頂ければと思いますが、軽くちょっとだけ説明をすると、暗号をずっとやっている研究者です。大学の教授をやっていますが、前回の議論にあったように、電子マネーの設計とかをプライベートセクターでやったということもあるので、実務経験もある大学教授であるということはちょっと言いたいと思います。かなり実務経験はあると思っています。それは国内でも国際でもですね。あと、やっぱりこれも何回も言わなきゃいけないと思うんですけども、基本的にはビットコインとか暗号資産は学術的中立性のために持っておりません。この中立性は宣言したいと思います。
3ページ目に行って頂いて、この発表におけるTake Awayとして、まず、前回も問題の構造をちゃんと理解しなければいけませんよねということを申し上げたので、今回の研究会の多分大きな目標であるところの、イノベーションを促進しつつ信頼のある金融システムをつくるかというところがポイントだと思うんですけど、なぜこれまでのやり方は多分ワークしないであろうか、ワークしていないのだろうかということをちゃんとまず理解しましょうと。それはステークホルダーがどうなっているか、エコシステムがどうなっているかというところの問題をまず理解しましょうというのが一つと、だとしたら、その構造を理解した上で、でも、信頼あるイノベーションをどう促進するのかというときに、どういうことをしなければいけないのかということを説明したいと思います。
ただし書きに書いていますが、議論を混乱させないために、本発表ではブロックチェーンと言えばパーミッションレスブロックチェーンのことを指します。パーミッションドブロックチェーンは、基本的にはトラストモデルとしては従来のタイムスタンプに極めて近くて、規制上の議論が、タイムスタンプから議論したほうがいいぐらいなガバナンスモデルだと思うので、それはこの新しい規制を議論する場としてはそぐわないだろうということで、少なくともこの発表では除外をして、パーミッションレスブロックチェーンのことだけを議論します。
次、4ページ目ですかね。お願いします。何でこういう分散型技術であるとか、技術のレイヤリング、あるいはアンバンドリングが必要かというと、我々が今この研究会をWebEXでやれていること、そしてインターネットがあるということに尽きるわけです。コロナでもう1年半ぐらいこんな生活を続けていますけど、インターネットがなかったらどうしたかというぐらい、インターネットがあって間に合ってよかったという時代で、インターネットがなかったら、例えばこの研究会があるときに、こういう電話会議をするサービスをサイバーアタックすると止められちゃうわけですよね。そういうことが、これがやっぱり左側の、1つのサービスを、サービス提供者が全部バーティカルでつくるというシステムの極めて大きな弱みであって、それを、いろんな人たちが分散をして、アンバンドルされて水平分業して、個別のバーティカルをつくっていくという形をすることによって、新しいサービスもできるし、どこかをやられても大丈夫だということで、これがやっぱりインターネットのイノベーションの源泉であり、今日我々がこのテレビ会議をできている大きな理由なわけですよね。
そこで、ビジネスロジックであるとか応用技術であるとか、インフラみたいなものが、それぞれ別の事業者が提供して、それらをバンドルし直せるということ、あとはその3つによってトラストを外部化することができるというのがイノベーションの極めて大きな源泉であったわけです。一方で、これを分けたことによって課題を引き起こすということがあることが理解をしなきゃいけないということです。これがまず、1つ目の視点。
次、5ページ目に行って頂いて、金融当局は規制目標というのを持っていて、これは教科書的に言うと、金融安定と消費者保護あるいは投資家保護、あとは金融犯罪の防止という3つの目標があります。これは金融当局の規制目標ではあるんですけども、金融当局が趣味でやっている目標ではなくて、社会全体としてもこれが求められる要件になるということをまず理解しなければいけません。これらに反することをやりたいサービスを、スタートアップがつくりたいのだということは、社会的に許されないだろうと思っています。その中で分散型金融みたいのが出てくることによって、例えば金融安定上、例えばリスクのカバーできていないサービスができてしまうことによって、リーマンショックのようなことが起きてしまわないかということだったりとか、あるいは消費者保護、投資家保護という意味では、それこそ暗号資産の取引所がアタックされて流出するとか、内部不正があったりとか、あるいは詐欺的なICOがたくさんあったりというようなことが発生したりとか、金融犯罪防止というのも、これはもう一般的で、やっぱりマネロンであったり、テロリストへの資金供与ですね。いわゆるマネロンとかテロリストファイナンシングの問題が声高に叫ばれるようになったのは、ちょうど20年たちましたけど、9.11があった後で、やっぱりこれが新たに起きた大きな違いなんだろうと思います。少なくともこの3つというのが、金融当局の規制目標でもあるし、それがデジタル分散型金融においても、当然において想定されるというところを、まずはもう一度、理解する必要があるということです。
次、6ページへ行ってください。先ほどもう既にFSBのレポートのことを御紹介頂いたので、同じことを書いているのに近いんですけども、FSBのレポートの中で、分散型金融技術、Decentralized financial technologyという言葉が定義をされています。もう一つは、それに基づいた分散型金融システムという言葉があって、先ほど申し上げた技術を使ってつくられたシステム。これは分散型金融技術がもたらし得る新しい金融システム全般のことを指すと。一方で、いわゆるDeFi、これは前回、私、マーケティングワードで申し上げましたけど、DeFiの定義ってあまりないんですね。だからここに(So-called)DeFiって書いているんですけども、分散型金融システムを構成している特定のアプリケーションということでいろいろあります。このスライドの下のほうに図があって、今ちょっと画面共有で出ていないかもしれないんですけれども、ベン図で言うとこんな感じになっていて、多分、一番左側にトラディショナルな金融システムがあって、右側にDecentralized financial systemってある中で、DeFiと言っているのはこの辺にあって、もしかしたら緑丸からちょっとはみ出ているものも存在するかもしれないというぐらいで、ただ、問題は、このいわゆるDeFiと呼ばれるものが、やはり定義がはっきり、しかも規制当局者から見たときに、どうそれを捉えていいのかというところが見にくくなっているということはあるのだろうと思います。
7ページ目です。先ほどのFSBのレポート、これはFSBのレポートを作る前に、私もFSBの会議に参加させてもらったこともあるので、その成立過程は存じ上げているんですけども、分散という意味が3つぐらいあるとそこには書かれていて、リスクテイクというのはビジネス継続上ですね。先ほどタイムスタンプの話をしましたけど、例えば運営する会社が破産してなくなってしまうかもしれないというリスクテイクに、ある意味、ビットコイン的なものというのは意味があって、ビジネス継続上のリスクテイクを分散し得るのだということと、あとは、例えば意思決定みたいなのは会社のガバナンスと一緒で、ある人がワンマンで何か決めて、不都合なことが起きる、利益相反が起きるということを回避できるのだというのと、そもそもみんなが共通で参照する記録の維持というのを分散し得るんだということで、3つぐらい意味があって、個々のDeFiのプロジェクトと言っているものが、どれで分散って言っているのかよく分からない。でも、この3つぐらいの軸はありそうだとはいうものの、どこがどうなっているのか分からないので、それをこの3つぐらいの軸をちゃんと意識して、じゃあどういう分散なのというのを実は見ていかないと、それがリスクがどれぐらいなのか、いいのか悪いのか分からないということなんだろうと思います。
8ページ目に行って頂いて、じゃあ、この分散型金融とかDeFiって言っているプロジェクトが、本当に今言った3つの軸で分散しているのかというと、それには多くの人が今までクエスチョンマークを実際にはつけていて、だから、先ほどの資料でSo-called、いわゆるってつけたんですけれども、ちょうど8月19日にGary Gensler、アメリカのSECの委員長がこんなこと言っていて、DeFiというのは少なくとも言い過ぎですと。言葉の使い方として言い過ぎなんじゃないかと。それは、もちろんオープンソースのソフトウエアのようなソフトウエアを書くということで、ビットコインのようなソフトをつくる一つの原動力になっているのと同時に、一方で、ガバナンスに関する権利とか手数料を得るグループが同じ組織にいて、その人たちは後援者だったりスポンサーだったり、場合によってはVCの人たちとの利益相反じゃないですけど、インセンティブ構造が存在して、分散と言いつつ、ある種、利益の構造みたいなものが裏に見えているので、本当にこれは分散と言っているのかということが分からない、二重構造になっているんだよねということを指摘しています。この指摘は極めて重要な指摘だと思っていて、何がどういうふうに入り組んでいるかというのを改めて解明する必要があるということになります。
9ページに行って頂いて、これが、じゃあどう解明するのかという、前回も、誰が誰の肩に乗っているのかとか、責任の依存関係っていうのがどうなっているのかっていうのを解明しなきゃいけないと申し上げましたが、その例でして、これ全部は、文字が細かく量が多いので読みませんが、分散型金融をつくるのに必要なステークホルダーはこれだけではないと思うんですけど、ざっくり分けてこれぐらいと考えています。例えば規制当局が監督しなきゃいけませんし、エンドユーザーであるところの消費者とか投資家もいますし、サービスを提供するビジネスエンティティもいれば、その原動力となるソフトウエアを作るオープンソースエンジニアもいれば、それらのソフトウエアやアルゴリズムがセキュアであるためのセキュリティの研究をする暗号研究者みたいなのもいて、もっといると思うんですけど、これぐらいの人たちがいる中で、それぞれの人がほかのステークホルダーに対して、こんなことはしてくれるはずみたいな、「はず」っていう期待、場合によっては過剰な期待、達成されることがあり得ないような期待までされていて、それが積み重なってできているんですね。
多分、この中に明らかに過剰な期待がたくさんあって、この研究会で問題になるであろうリスクの構造ってどうなっているのかというのを、ここから実は解き明かしていかないといけないです。何事もシルバーブレット、銀の弾丸はなくて、万能薬はないので、ある数式はこういうときにはうまくいくけど、うまくいかないみたいな前提条件とか環境条件みたいなのがあるんですけども、それも論文にうまく書いてなかったりして、うまく伝わってないわけですよね。ここの関係を、うまくいっている、うまくいってないというのをちゃんと見据えないと、実は規制の議論もできないということです。
10ページ目に移って頂いて、これが今日の一番のキースライドだと思っているんですけども、グローバルであるということと、インターナショナルであるということと、ナショナルであるということを分けましょうと。これは前回申し上げたんですけど、ここをちょっと時間をかけて申し上げたいと思います。
分散型金融なりインターネットなりと、あと、インターネット、ビットコイン、ブロックチェーンと書いていますけど、こういう数式で表されるソフトウエアたちは、基本的には国家の都合とか国民の都合とか関係なくて存在します。だから、GAFAはグローバルプラットフォーマーですし、インターネットは、例えばある国が、今、この会議を止めようと思って、日本のインターネット止めたいと思っても止められないようにできているんですね。グローバルって、グローブ、つまり地球なので、地球に共通の営みとして、国家とは独立に存在するものです。こういうものがどんどん出てくるわけですね。もう国の都合関係なく出てくる。一方で、例えば規制当局とか、私はアメリカに住んでいますけど、日本に住んでいる人は、自分たちの財産権だとかいろんな権利であるとか、その住んでいる社会の秩序を保ってもらうために、ある種のルールを、例えば日本であれば民主主義によってつくって、日本国憲法の下にいろんなルールをつくり、社会秩序を形成して、ある種のガバナンスを政府に付託して、それは民主主義による合意によってできているわけですよね。
一方で、規制当局にとっては、国際連携みたいなのがないと、自分たちの国の安全も守れなければ、国際的な平和であったり、経済発展というのが見込まれないという意味では、インターナショナルな関係も必要というのがある。そして、オープンソースエンジニアが使っているソフトウエアが、末端の我々の消費者とか投資家にも関係するし、回り回って分散型金融使っていない一般市民にも影響し得るという状況の中で、このスライドの右上に矢印と丸の図があって、これはローレンス・レッシグの"Code"において、グローバル時代のガバナンスを表した有名な図ですけども、グローバルな技術を使いながら、アーキテクチャーと呼ばれるものの作り手が国内秩序の作り手の一部になり得るので、彼らは実は法律をつくる人よりも上に上がるかもしれなくて、そんなことはやっちゃいけないけど、日本国憲法より、上位に立ってはいけないということを考えるとすると、この点の調和が必要です。
何でフェィスブックリブラが、先ほどのグローバル・ステーブルコインの議論においてアメリカで相当たたかれたかというと、それはアメリカの国家という民主主義国家において、金融に関するいろんな政策であったり、行政のやることというのは、民主主義の結果として成り立っている。一方でフェィスブックリブラは、リブラ協会の当時30社のガバナンスによっていろんなものが決められるとすると、その30社の意思決定は、アメリカの民主主義の根幹である選挙の結果を上回っていいのかという話であって、それはいかんというのがフェイスブックリブラがアメリカの連邦議会でさんざんやり玉に上がった根幹であって、必要なのは、グローバルな技術というのが、インターネットができたように、我々のこういうコロナにおいても便利に会議ができるという便益をもたらす一方で、国民にとってどういう秩序に影響し得るのかとか、インターナショナルの秩序とどう調和するのかということを考える必要があります。
ここの図でビジネスのアイコンをちょっと大きく描いたのは、このステークホルダーの中で、一番このナショナルとインターナショナルとグローバルのはざまに立つのがビジネスだからです。そういう意味で、ビジネスエンティティにかかる責任も大きくなる。だからベネフィットも大きくなって、もうけられるというのがGAFAの事情だと思うんですけど、そういう構造を理解しないと、調和を保って、信頼あるイノベーションを起こすという議論には、到底たどり着かないのだろうと思います。
11ページ目に移ります。もう一つの視点は、何でエンジニアと、例えば、規制当局者が一緒に手を組まなきゃいけないかという後半の議論の前段として、線型的な変化と指数関数的な変化という話をしなきゃいけなくて、我々、多分コロナウイルスで痛いほど分かったと思うんですけど、世の中エクスポネンシャル、指数関数的に推移する事象に対して、線形的にしかリソースアロケーションできないようなことは非常に無力です。もちろん、エクスポネンシャルの底が1を割ればいいんですけども、デジタルの世界では基本的に無力で、例えば我々日本政府も、例えばSociety5.0であるとか、サイバーフィジカルと言っているように、これからP2PとかM2Mのトランザクションが、指数関数的に増える可能性がある中で、一方で規制当局者とか警察の職員の数は指数関数的には残念ながら増えないので、今あるFATFのトラベルルールのような従来型の規制アプローチというのはそのままでは対応できなくなって、こういう指数関数的に増えていくようなものに対する規制を助けるような、いわゆるレグテックと呼ばれるものかもしれませんけど、技術をエンジニアと一緒に考えなきゃいけない時代に差しかかっているということだと思うんです。
こういうことも含めて、幾つかの世の中が動いている背景をまず理解しなきゃいけないというのが11ページ目までで説明したかったことです。
12ページ目に行って、そうは言っても、何回も、インターネットがあってよかったねっていう話をしていますが、このブロックチェーンができる、あるいはこういう分散型金融ができるということの一つの本当の貢献は、ガバナンスモデルとかビジネスの継続の意味で、あるいは故障とかサイバー攻撃への体制という意味で、いわゆる単一障害点ですね、Single Point of Failureを除去でき得るのだというところが一番大きくて、今回、コロナとテレビ会議の例を言っていますけど、いろんな場面においてPoint of Failureがあることで、機動的に物事ができない、あるいは何か止められる可能性があるというおそれを持つということを除去することは、何かが起きたときにやっぱり社会的便益が非常に大きいわけですよね。このメリットをスポイルしないようにどうするのかというところを考える必要があるだろうと。一番下に書いてあるんですけど、Single Point of Failureがない持続的な台帳というものをもしつくることができたならば、金融サービスの信頼の一部を外部化できることが可能になって、イノベーションのコストを軽減できるわけです。ここを忘れてはいけないのだろうと思います。
13ページ目。ということで、先ほど言った、その責任の構造は分からないですよねと。グローバルとローカルとナショナルというのが入り組んでいますよねと。あとは、もう一つ、先ほど言った、基盤的分散インフラ、ここはブロックチェーンのことを指しているんですけれども、ここはオープンソースのエンジニアだったり研究者が一生懸命技術を裏づけしながらつくってはいるものの、例えばビットコインのマイニングリワードは、彼らが受け取るわけではない。一方で、何かこのソフトにバグがありましたとかっていったときに、彼らが一生懸命直さなきゃいけないわけです。そういうインフラが常にあり、インフラが安全に保たれているということが、この分散型金融における責任の一端ではある一方で、彼らに対してなかなか報酬が行ってないという問題があって、彼らはデジタル社会のインフラを担う消防とか警察とか自衛隊のような立場でもあるんですけども、一方で多くのインターネットのオープンソースプロジェクトであっても、持続的に資金が賄えていないっていうプロジェクトは結構あって、そうすると、その脆弱性がほっぽらかしになっているというケースがよくあって、やっぱりこういうところが、もしこれが金融サービスに使おうとするのであれば、ちゃんとした責任を負えるようにしなきゃいけない。
だとすると、ビジネスが持っている利益みたいなのが還元される構造を作らなきゃいけないんだと思うんですね。インターネットにおいては、例えば、インターネットの標準を作るIETFみたいな組織を運営しているインターネットソサエティの予算の一部は、.orgドメインの登録料を充てるという、ある種、大人の知恵を絞っているわけですけど、こういうことを考えなきゃいけないでしょう。あとは、規制当局からすると、ビジネスエンティティというのは、基本的にはPoint of Failureのところを責任を持って運営しますよということがあるから、投資家とか消費者はお金を払うんです。やっとそれでお金を払ってくれるわけですけど、その払っているお金とビジネスエンティティが負っている責任構造、さきほほどの「何とかのはず」という、たくさんあった「はず」がちゃんと解消できるのかというところを、ちゃんとカバーし合えているのかというところを、規制当局は見ていかないとという意味で、多分この13ページにあるような図をうまく整理してあげないと、じゃあ結局、分散型金融とかっていうのはリスクがたくさんあります、規制当局はリスクがたくさんあるものは許さんってなると思うんですけど、いや、そうじゃないですと。リスクというのはちゃんとカバーし得るのですということをビジネスエンティティ、あるいはエンジニアの人たちが主張するには、こういう構造の下で主張していかなきゃいけないんだと思っています。
ということで、14ページ目に行って頂いて、Single Point of Failureをなくすという意味で、中央集権的な信頼、今までのような中央集権的なサービスは、安定していていいような気がするんですけど、Single Point of Failureになり得るし、サイバーアタックされたら止まる銀行のシステムとかもあると思うんですけども、あるいは、サイバーアタックを受けなくても止まる銀行のシステムもあるかもしれませんけど、Single Point of Failureになり得るということが大きいのと、あとはパーミッションレスイノベーションと言いますけど、インターネット型イノベーションの阻害要因であるわけですよね。一方で、多分、今、規制当局者がすごい懸念しているところであるディーセントライズされたトラストというのは、やっぱり責任の構造が不安定だし、インセンティブ構造が完全じゃないし、ビットコインというペイメントの範囲ではうまくいくもしれないけれども、より広い応用では未知数ですよねというところからいうと、やっぱりSingle Point of Failureをなくしつつ、リスク構造を解明して補い合うという形に変えていく。こういう、1番右にPoly-centric Stewardshipと書いていますけど、複数の主体による相互協力というのをつくる。その基盤には、Point of Failureのない信頼基盤というのがあるというふうに変えていくということが、多分、この研究会が目標としている、イノベーションを阻害しないけど、信頼ある金融をつくるのだというところに引っかかるのだと思います。
次、15ページ目に移って頂いて、これは実は、私も参加させて頂いた2019年G20のパネルディスカッションで示した図ですけれども、じゃあ、そういうことを一緒につくりたいとは思ったとして、じゃあ、ステークホルダーの間でコミュニケーションって十分できているのかというと、できてないですと。それはもう規制当局者と、サイファーバンクと呼ばれる政府大嫌いな人たちがコミュニケーションとるということはまれですし、ビジネスエンティティは、例えばVCからお金をもらっていると、それを早く返してあげなきゃいけないという意味で、技術の成熟度とは別に、どんどんサービスを行ってしまうインセンティブがある。場合によっては詐欺的なこともやってしまうということがあり得る。そして。ビジネスエンティティが出しているホワイトペーパーを一般の消費者が読み解けるかといったら読めないですね。こんな感じで、そもそも、じゃあ、建設的にエコシステムをつくっていきましょうねっていうときのコミュニケーションができてないんだと思うんです。
そういう問題意識があって、先ほどのFSBのレポートについては、その準備の議論としてFSBとかOECDの議論にも参加させて頂いて、その結果として、次、16ページになりますけども、ちょうど2019年のG20、福岡でやるときに、マルチステークホルダーの議論というのをセミナーでやりました。ここに、村井先生がモデレーターをされて、あとは、Klass Knot、これは政府系、あるいは規制当局に近い人ですよね。あと、私がアカデミアで、Brad Carrは、どちらかというとトラディショナルな金融サービス、IIFの偉い人で、真ん中のAdam Back、彼はブロックストリームのCEOで、そもそもビットコインの中を作っているメンバーのメイン中のメインであって、そういう意味では政府の方が大嫌いなサイファーバンクの人がいて、彼らでどういう協力がし得るのだという議論をしました。このとき、多分、金融庁の計らいだと思うんですけども、この5人の中のセンターを、わざとサイファーバンクの人を置くということで、いかに異なる立場の人、あるいは敵対している立場の人が協力し得るのだということを議論しました。
その結果として、17ページにあるような、2019年のG20のコミュニケにおいて、先ほど紹介頂いた2019年6月6日のFSBのレポートの中には、もちろん分散型金融の定義のことも書いてあるんですけど、一方で、インターネットはマルチステークホルダーガバナンスをこういうふうにやっているんですと、うまく行っている例としてこういうのがあるんですということも実はたっぷり書かれていて、それを踏まえた上でマルチステークホルダーの議論が必要なんだということが報告書に書かれていて、その報告書を歓迎するという形で、2019年のG20のコミュニケ、これは金融会合もそうですし、全体会合でもコミュニケに掲載をされました。
そのコミュニケを受ける形で、次、18ページにありますけど、我々、BGIN、Blockchain Governance Initiative Networkというのをつくりました。これはインターネットの、例えば先ほど申し上げたIETFとかの形式にならっているんですけれども、全てのステークホルダーが自由に参加できる議論の場であって、オンラインミーティングと、対面のミーティングと両方やりながら、技術の仕様であったりガイダンスであったり、あるいは運用の仕様であったりガイダンスであったり、いろんなドキュメントを一緒につくっていきましょうと。共通理解を醸成するというのと、課題への対処のための議論とドキュメントづくりをしましょうということをする場所をつくりました。これが2020年の3月です。
次のページ、19ページ目に行って頂いて、BGINの中では、総会は年3回。年3回というのはちょうどよくて、今、いろんなお題、新しい話題が出てくるので、年3回ぐらいやると新しい話題にも機動的に対処できるんですね。あとはいろんなワーキンググループとかをつくって、隔週でミーティングをして、これ、誰でも参加できるんですけども、共通の課題について議論をしてドキュメントをつくるということをやっています。右側に、スクリーンショットがありますけど、GoogleDocsだったりGitHubを使って、金融庁の人もGitHubに触ったり、GoogleDocsに触るし、エンジニアの人も触るということを本当にやっています。総会、今まで3回。ムンバイ、パリ、ワシントンDCでやって、次回、11月2日から4日にアフリカでやって、来年の春に東京でやるという予定になっています。メーリングリストとかチャットをつくっていて、本当にこういうコミュニケーションをとっているということです。
次に、20ページ目に行って頂いて、今、BGINの中でやっている課題というのは、キーマネジメントが一番やっぱり大きくて、それはやっぱりサイバーアタックを受けたときにどうするんだということも含めて、キーマネジメントの話。あとは、分散型の資金集め、トレジャりーですね。資金集めとかガバナンスの話だったりとかをしています。あと今のDeFiと関係する監督上の懸念点みたいなところというののドキュメントがもうすぐ出版されることになっています。
次、21ページ目に行って、今、一番進んでいるのがFATFとの対話ですね。今年の4月にFATFのちょうど新しいガイダンスができるときで、パブコメをやっていた時期ですけれども、クローズドな意見聴取の場、バーチャルアセットコンタクトグループに招待されまして、BGINでマルチステークホルダーでこんな議論をしているんだよということをインプットして、そのお返しに4月にバーチャルワシントンDCで総会を開催したときに、FATFの人も呼んで、マルチステークホルダー議論を実際して、こんなこと多分異例中の異例だと思うんだけど、していまして、それがある意味うまくいったということで、今、ちょうど来週、9月22日のOECDのポリシーフォーラムでFATFのパネルディスカッションをやるんですけれども、その後の、また進捗の議論をしたりとか、次にアフリカでやるときにもまた次の議論をします。
もちろんFATFのガイダンスを変えてくださいという議論は難しいので、どういうところから協力できるかねって話をしたときに出てきたのが、暗号資産がランサムアタックの支払いに使われたときのトレースというのを一緒に考えるのはぜひやりたいということでやっていて、驚くべきことに、例えばZCashとか、Dashのような、匿名暗号資産、ビットコインより匿名性が高い暗号資産をつくる人たちが、これを一緒に協力するよって言って、ドキュメントの主たるリーダーになってくれているということで、これはかなりうまくいっている例なのだろうと思います。
あと、22ページ目ですね。ちょうど前回の総会の前にエルサルバドルのビットコインの法定通貨化の発表があって、ちょうどこの前、スタートしましたけれども、その最初の発表の1週間か2週間後だったので、ちょうどBGINの場に、この写真の右下の人がルイス・ロドリゲスというエルサルバドルをやっている張本人で、その1個上がビットコインビーチっていう、エルサルバドルでエンジニアリングを助けている人たちですけれども、その人たちを交えて、どこに懸念があって、どこにメリットがあって、じゃあどうしていくのだということを議論をしています。これは継続的に議論して、次回、進捗報告をしてくださいと言うふうになっています。
23ページ目、もう時間をかなり超過しているので少し急ぎますと、前回の総会でそういう議論をして、ランサムウエアアタックの話とかは継続的に、多分もうすぐドキュメントも早く出せるのかなというところと、今までキーマネジメントだとか、DeFiの規制上の論点のドキュメントについてももうすぐ出せますという話です。あと、NFTの話も議論し始めているので、簡単なレポートは多分二、三か月で出てくるのだろうと思います。
24ページ目です。これが最後の2ページなんですけれども、今回のまとめの提言として、まず、We don’t know what we don’t knowと書いてありますけど、我々は自分たちが何を知らないかを知らないので、例えばいろんな人とちゃんと議論をして、規制当局は実はこんなところを気にしているんだとか、エンジニアは実はこういうところは知らないんだとか、多分こういうことを考えているんだということをシェアしながら、自分たちが自分の思いで作っているものが最強の金融システムだということは多分考えを捨てたほうがいいと思うんですね。まずは共通の理解を構築していくことが重要で、規制当局の目的、言葉の定義もそうですし、規制当局の目的とかそうですし、そんなこともやらなきゃいけないと思うんですね。
あとは、ステークホルダーが提案し合う形のコミュニケーションの文化と環境をつくると。先ほどのランサムウェアの話もそうだと思うんですけれども、あるいはリニア対エクスポネンシャルを乗り越えるための規制の効率化ってどうするのかとか。アメリカでは、規制当局と健全な対話ができる人が企業にいるか、チームにいるかどうかって非常に重視されていて、多分あまり表に出てこないと思うんですけど、皆さんがよく知っているような取引所さんであるとか、あと、暗号資産のプロジェクトが、実はそういう人たちを今、猛烈に雇っています。日本は多分遅れていると思うんですけども、正当な対話をしている人たちに対してはアメリカの規制当局はちゃんと答えるというふうになっている。
あとは、やっぱりグローバルなアカデミアを交えてリスク分析をしていくということが極めて重要で、そういうコミュニケーションしていく必要があると思います。もちろん、日本の中でフィンテックの質問を受ける金融庁の組織があって、そこでやり取りする人たちはたくさんいると思うんですけども、その人たちが電話してこう聞いたってSNSに書くのでは駄目で、やっぱり公開の場で中立な議論をしていくことが必要なんだと思います。
25ページ目に移って頂いて、やっぱりそういうことを促進するにはある種のフォーマットみたいなものが必要で、どういうことが書かれるとコミュニケーションが成立するのかということを考える必要があるのだろうと思います。
もう一つは、プロセスが必要で、多分アカデミアによる公開評価、場合によるとコンペティションというのも必要です。例えば暗号技術。我々は暗号技術の専門家ですけれども、暗号技術って、そういうものをやって、数年かけてやっと安全性を確かめていくんですね。ビットコインであったりブロックチェーンの人たちが使っているハッシュ関数って安全だと言うんですけど、そのハッシュ関数の安全性を評価するのに5年とか6年平気でかけるんですよ。そこに税金がたくさん投じられるという構造になっているので、そういうことを実はやらないと、安全性って実は確認できないんですね。あとは、自己評価書をちゃんと提出して、エキスパートが追試するとか、あるいは評価基準が決まってなければそれも公募するとか、そんなことを含めて検討する必要があるのだろうと思います。
ということで、かなり時間を超過したと思うんですけども、グローバルを考えると、日本の中で議論を閉じるのではなく、ブロックチェーンも含めて起きていることは極めてグローバルで、その意味で日本発のブロックチェーンっていう宣伝をするプロジェクトもありますが、それは多分、論理矛盾しているでしょうし、先ほど言ったグローバルとナショナルとインターナショナルの違いを気をつけながらコミュニケーションしていくということが重要なんだということで、すみません、かなり時間超過しましたけど、発表を終わりたいと思います。以上です。